

第一話 商人団の護衛
商人団の護衛をすることになった冒険者たち。
ジョーランドからの依頼で、依頼の出発前に巫女の様子を見てくるよう頼まれる。
翌早朝、ラドン森林へ向かい巫女に会う冒険者たちだったが、巫女はそっけない態度で「異常はない」と告げ、なぜラゴニアに顔を出さないのかと尋ねる冒険者に「船は数多の航海で傷つき、そのたびに、皆さんは修理を繰り返します。そうして、始めに船だった部品が一つもなくなってしまった時、それは本当に、みなさんの船なのでしょうか」と語る。
その後、依頼へと向かう冒険者。
商人の積み荷が"竜脈石"という鉱石であることを聞く。どことなく違和感を感じた冒険者だが、依頼は予定通り遂行され、無事クェレブレへと到着する。
町を散策する最中、サクラと名乗る一人の少女と出会う。
彼女は、街の中央にある観測所から来たと語り、冒険者に「私をラゴニアに連れてってよ」とせがむ。理由を尋ねようとすると、突如悲鳴が聞こえ、冒険者は向かわざるを得なくなってしまう。
悲鳴のもとへと向かえば、護衛してきた商人が、血相を変えて暴れまわっている。
どうにかその場を収め事情を聴けば、商人は、取引を終えた後の記憶がないという。
商人が竜脈石を売った相手の名前を聞けば、現町長の息子にして、竜災研究の第一人者"筆頭"キーリ・クレストだった。
第二話 ムシュフシュ遺跡北部
山岳地帯の調査依頼
ここ数か月、魔物が狂暴化してラゴニアまで流れてくる事案が何件か発生していた。魔物の種類は様々で、原因は不明。唯一の共通点は、ムシュフシュ遺跡周辺からやってくるという点だった。遺跡ではなく、遺跡周辺に原因があるのではないかとアタリをつけたジョーランドからの依頼により、冒険者たちは、遺跡周辺の山岳地帯の調査依頼を受けることになった。
それと同時期に、竜巫女であるメイが不吉な予知をする。
"災厄の残滓が、すべてを喰らう。災禍の宴、ここに始まれり"
予知を危惧した巫女は、調査依頼への同行を申し出る。
一抹の不安を抱えながらも、巫女を連れ遺跡を調査する冒険者たち。いくらかのハプニングを乗り越える中、巫女は語る。
竜災研究の第一人者であるキーリも、その予知に出てきたこと、そんなキーリに不信感を覚えていること、過去に会った時、自身に対して"船の問い"をしてきたこと……
数多の航海で傷つき、修理を繰り返し、はじめとは異なる部品だけで構成された船の逸話。
急速に変化し続けるラゴニアに対し、気持ちの整理もつかぬまま置いて行かれてしまうような、焦燥感に駆られる巫女に、君たちはどんな言葉をかけただろうか。
探索を進める中、冒険者たちは、キーリと、クェレブレで出会った少女サクラが、数名の護衛を連れて同じく調査に来ている場面に遭遇する。身を隠し様子を伺う冒険者だったが、キーリが零した「終の竜災の"真実"」という言葉に、メイは、君たちの制止も聞かずに姿を見せてしまう。
「研究者の人っていつもそうですよね…! いつも上から目線で、全部が終わった後にやってきて、なにもかもを踏み荒らして、何も教えてくれずに、勝手に帰っていく。竜災で亡くなった人の事、生き残った人の事…なんだと思ってるんですか!」
声を荒げるメイに対し、キーリはあくまで冷静に答えを返す。
キーリの口から語られたのは、ラゴニアにおける巫女というシステムについて、そして、終の竜災の時、なぜ予知が遅れたのかということについてだった。
「竜巫女の力は、血統に関係なく、ラゴニアに住む幼い少女からランダムに選ばれた者に与えられる」
「そして、巫女は常に一人。巫女が2人以上いた時代であっても、竜巫女の力を持つ者はただひとりだ」
「新たな巫女が選ばれたとき、元からいた巫女は力を失う」
「巫女の選出には一定の周期があり、本来であれば、巫女の存命中に新たな巫女が選ばれることはない。ただ、数千年に一度の例外を除いてはな」
「閏や、時計の時刻合わせと同じだ。周期は、長い年月をかけて歪を蓄積する。その歪を解消する時、巫女の存命中に、新たな巫女が生まれ、力が受け継がれる」
「終の竜災のとき、力はすでに受け継がれていた」
「お前は終の竜災を予見していたのではないのか? しかし、それを伝えなかった。いや、伝えるすべがなかったというべきか。怖い夢を見たとでも思っていたのだろう。だが結果として、大勢が死んだ」
その時、突如として地面が崩落する。
落ちた先は、ムシュフシュ遺跡の内部。ところどころにあの"竜脈石"が埋まっている。鉱脈のようだ。
冒険者たちは、キーリの魔法により一命は取り留めるが、巫女、サクラ、護衛たちと分断されてしまう。
竜脈石についての研究をしているというキーリの言によれば、この鉱脈を追えば、分断された側とも合流できるらしい。
さらにこの鉱脈を追えば、竜脈石の"原泉"にたどり着くことができる、とも。
先の一件から、魔物の凶暴化と、商人たちの暴徒化は少なからず結びついていた。
冒険者たちはキーリに従い、遺跡内部を探索していくことになる。
キーリは交換条件に、冒険者たちの質問に答えると言った。
君たちは、何を尋ねただろうか → おしえて!キーリ先生!
探索の末、ついに鉱脈石の原泉へとたどり着く。
今までみてきたそれとは比べ物にならない大きさの竜脈石が鎮座しており、天井が崩落していた。
無事、巫女やサクラとも合流でき、ひとまずの安心を得るが、その刹那、竜脈石から凄まじい衝撃波が放たれ、洞窟全体が崩壊を起こす。退路は塞がれ、衝撃波受けてしまった黒服は、どういうわけか、その武具が粉々に砕けてしまっていた。
竜脈石は、なおも衝撃波を放ち続けている。竜脈石を破壊すれば衝撃波は止まるだろうが、武具を破壊されてしまっては近づくこともできない。
サクラの機転により、巫女とサクラが力を合わせ、高位の神聖魔法を行使する。
「儚 く 脆 き 竜 の 盾 !!!」
洞窟の崩壊は一時的に止まり、君たちの刃は竜脈石へと届いた。
善戦により、竜脈石の生み出した眷属ともども竜脈石の破壊に成功する。
崩れ行く竜脈石を見届ける前に、君たちの脳内に、嫌なイメージが浮かんでくる。
場所は…ラゴニアの裏手だろうか。ヨルムンガ山を見上げるように君たちは立っている。
遠目に、何かがなだれこんでくるのがわかる。雪、水、土、どれでもない。
無数の目、無数の脚、角、牙が、迫ってくる。
視界に収まりきらないほどの、数他の魔物が、群れを成して山を下ってくる。
その債奥に、狂った目をした竜がいた。
呼吸をするように影を生み出し、影から魔物が現れる。
竜の瞳が、君たちを睨みつけ──────
意識は現実に引き戻される。
メイが、ふらつきながらつぶやく
「来ます…次の、竜災が……!」
冒険者たちの活躍により、ムシュフシュ遺跡周辺での狂暴化騒ぎは収まり、竜脈石が頻繁に採掘されることもなくなった。
メイが、そして君たちが見た光景が本当に起こるのだとしたら……。
冒険者ギルド"鉄腕の掟"およびラゴニアでは、次なる竜災に備え、村を守る"砦"の建設に着手する。
次の竜災まで、あと、1年────────
セイヴァー・オブ・ドラゴン
第三話 引っ越しの手伝い
きみたち冒険者は、キーリからの依頼で、クェレブレにある観測所訪れていた。
依頼の内容は、引越しの手伝い。経験を積んだ冒険者が受けるには役不足に感じてしまうような内容に、不信感を覚えつつも、キーリから依頼の詳細を聞く。
言い渡されたのは、234冊の研究資料の整理と処分だった。
理由を尋ねれば「研究室を引き払うことになった」と語る。
クェレブレは、ラゴニアと竜災の歴史についての記録、編纂を行う"観測者の街"だが、それ以上のことは許されていなかったのだ。例えばそれは、ラゴニアへのフィールドワークや、竜巫女への接触を指す。
キーリ曰く、それが町長にバレたとのこと。半ば強制的に研究を下ろされることとなったキーリは、その資料の処分を冒険者たちに手伝わせたのだった。
「その処分の手伝いに来ただけの冒険者が、そんな資料を”偶然”見てしまったところで、まさか竜災の真相にたどり着けるとは思えない」
「それに、竜災の真相を知ったとしても、一介の冒険者風情がそれを語ったところで、なんの説得力もない」
「仮にそれが偶然優秀な冒険者で、それが巫女に伝わっていて、結果として、ラゴニアやクェレブレの人間全員がその真相を知ることになったとしても……」
「僕にはもう関係のないことだ」
そう告げ、キーリは研究室を後にする。
キーリの真意に気づき資料を集める冒険者たちだったが、情報は難解なうえに断片的で、どれもその真相には至ることができなかった。そんな折、どこからか、しわがれた老人の声が告げる「秘密の書庫で会いましょう」と。
言われた通りに仕掛けを動かすと、秘密の書庫が現れる。その中央に、声の主が座していた。
声の主──黒いローブを纏った老人は、つらい過去や悲しい記憶を対価に、"竜災"についての情報を話すという。
返答に困っていると、外で用事を終えたキーリが、駆け足で戻ってくる。
「おい! なぜこの部屋の扉が開いている! 冒険者、それに近づくな!」
「ゲェ!!ミ、見つかっタ!!」
老人は腕を振り上げ、地面にたたきつける。その瞬間、なにか柔らかい棒で頭を思いっきり殴られたような感覚に襲われ……
次に気が付いたとき、冒険者たちはどこかの平原に立っていた。
キーリはおらず、混乱する冒険者たちだったが、すぐに、どこからかその声だけが聞こえてきた。
「あれは、記憶を喰らう死霊”エムパミャチ”。僕が使役しているアンデッドだ」
「僕は、この死霊の力を利用することで、記憶の外部ストレージを作っていた。人間一人の記憶力など、限界があるからな」
「現実の君たちは、意識を失っている。全員で同じ夢の世界にいるような状態だと思ってほしい」
「つまり、君たちが今見ている光景は、死霊にストレージされていた記憶の一部、僕の研究していた竜災についての記録が構成した世界を見ているということになる。実際に何を見ているかはわからないが…脱出方法はただ一つ、"扉"を見つけることだ」
周囲の状況から、ここが過去のラゴニアであろうと推測した冒険者は、眼前に見える集落へと足を運び、"扉"を探すのだった。
訪れた集落にて、ここが、ラゴニアであることを確信する冒険者たち。
しかし、集落の住民は同じセリフしか話さず、冒険者たちの言葉に反応は返さない。これが、記録によって形作られた世界であることを暗に示していた。
集落を探索し扉を探す冒険者たちだったが、結局それを見つけることはできなかった。
そこで、冒険者たちは、ある少女と出会う。
少女の名前は"リュシア"
桜色の髪を二つにまとめた、快活な少女。しかし口調は丁寧で、名前や見た目に、ある種の既視感を覚えた。
自身がこの集落で一番かわいいと豪語する彼女は、君たちの言葉に対して反応を返し、まるで生きている人間のようにふるまう。
冒険者たちと会話する中で、リュシアは"シャクラ"という竜の名前を零す。
ラゴニアに住み、ラゴニアに繁栄をもたらしているという、偉大な竜の存在。冒険者たちは、リュシアに案内を頼み、シャクラの元へと向かうことにした。
森の中を歩き、ある滝の前へと連れていかれる。
現代には存在しない、巨大な滝。その向こうに、シャクラはいるのだという。
シャクラは、普段はその姿を見せず、滝に向かって投げられた問いに、声だけを返す。
姿を見せる時は、"約束"を果たせなくなったときだけだとリュシアは語る。
滝に向かって質問を投げかけてみる冒険者だったが、望んだ答えは返ってこなかった。
普段ならこんなことは無い、と首をかしげるリュシアのその遥か上空で、異変は起きていた。
紅い、一条の彗星が流れていく。
彗星は、まるで意志を持つかのように不思議に進路を変えると、こちらに向かって飛んでくる…!
─────キィン
君たちの頭上に落下するかに思われたが、何かにはじかれるようにして、君たちの背後、森を越え、その向こう
……ラゴニアへと、落下した。
着弾と同時に、地響きがあたりを襲う。
「行かなきゃ!」
リュシアを追いラゴニアへ向かうと、着弾のときに破壊されたであろう家々や畑がそこにあった。
落下してきた"それ"は、ゆっくりと起き上がる。
よく見れば、それは黒いドラゴンで、いつか耳にした"終の竜災 リトラ"の特徴そのものだった。
黒いドラゴンは、声を発するや否や、リュシアに対して「"つがい"になれ」と言い放つ。
当然拒否するリュシアだったが、黒いドラゴンは、ならばと言わんばかりに、黒い閃光を放つ。閃光に触れた大地や家屋は、いつか見た、あの黒い結晶のようになっていく。
その様子をみたリュシアは、祈った。
「シャクラ様…おねがい…ラゴニアを、助けて…!」
電が走る。雷雲が集まり、渦を巻く。強風が吹き、鳴動するかのように大地が揺れ始める。
空を仰げば、そこに、いた。
竜と呼ぶにはあまりにも巨大で、偉大で。存在そのものが災害と見間違えてしまうほどの、巨大な生命力の塊。
ありていに形容するなら、4枚の翼をもつ鯨だった。
一目見ただけでは視界に収めることすらままならず、音のない咆哮が、衝撃 波となって周囲へ放たれた。
目の前にいた黒いドラゴンは、巨大な竜を睨み、空へ飛ぶ。
上空で、2匹の竜とドラゴンがぶつかり合う。
拡散したエネルギーが、鋭い雷が、吹き飛ばされたドラゴンが、衝撃が、意図せず、ラゴニアへと降りかかる
冒険者たちは、"原初の竜災 グドラ"の真相をその目で見ることになる。
その真相に触れるや否や、時間が飛ぶ。
冒険者たちは、次の"シーン"へと飛ばされたのだ。
場所は、ラゴニアのようだった。
そこで再びリュシアと再会した冒険者たちは、リュシアから、ここが数年後のラゴニアであることを聞かされる。
集落のはずれにたてられた小さな墓石には、"クレスト"という名前が刻まれていたが、君たちの来訪により、その名前の上に生存を示す線がひかれる。冒険者たちは、"クレスト"の姓を持つ誰かの記憶を、記録として追体験していることに気づくのだった。
詳しい話を聞くため、リュシアの招待を受け家へと案内される冒険者たち。
そこは、かつて冒険者たちが巫女とであった、あの家だった。しかし、すぐそばにあったはずの泉はなくなっている。
家の扉を開け、出迎えてくれたのは、白い服に身を包み、竜のような特徴を持つ少女。
名を"メイ"といった。
リュシアは、あの日からあったことを教えてくれる。
■年前の大災害を”竜災”と呼んでいる。
あの黒いドラゴンは「また来る」と言っていた。
メイは、シャクラの力を受け継いだ”竜の巫女”
メイが成長して竜の力を十全に扱えるようになれば、あのドラゴンを倒すことができる。
本当はこんなことをしたくない、と吐露するリュシアだったが、竜に託されたその選択の重みを測ることはできなかった。
そうしているうちに、事態は悪い方向へと進んでいく。
突如、メイの身体が凍てつき始める。
身動きをとることもできず、怯えるメイに、リュシアが語りかける。
「メイ、よく聞いて。あなたはこれから、未来に行くの。遠い遠い未来」
「かならず、かならず会いに行くからね。それまで少しだけ、眠っていて」
「……おやすみなさい」
メイは何かを察するように黙ってうなずく。
これは逃れられぬ運命だと、結末であり、はじまりなのだと。
シャクラが施した、第二の作戦だった。来るときまで、メイを"保存"する。
妖精魔法アイスコフィンより、何倍も高度な魔法を目の当たりにする冒険者たちだったが、リュシアの決意は固かった。
杖を手に取り、再び訪れた竜災の対処へと向かうリュシアを、冒険者たちは追うのだった。
リュシアは、杖を手に、5体の幻獣に何かを指示していた。
種族も、分類も特定することがでいなかった。それは、記録による再現という不確かな情報であるということと同時に、これが、シャクラの生み出した"竜の眷属"であることを示していた。
リュシアは、追いかけてきた冒険者に対し、驚き咎めながらも、信頼を寄せる。
その目的は、黒いドラゴンの封印。儀式が完成するまでの間、時間を稼いでほしいと伝える
こうして、黒いドラゴンと竜の眷属、冒険者たちによる、戦いが始まった。
冒険者たちの一撃は、致命打とはならず、その姿勢を崩すに留まるが、その刹那、儀式が完成する。
動きを封じられた黒いドラゴンを、地面からあらわれたシャクラが丸のみにする。そのまま急浮上し、地面に倒れる。
その姿を隠すように、植物が繁茂し、変質させていく。
やがて、シャクラだったものは、ラゴニアの北部に悠然とそびえる"ヨルムンガ山脈"へと姿を変えたのだった。
封印は終わったのだろうかと、リュシアに目をやれば、力なく膝をつきながらも冒険者を案じていた。
しかしその言葉は、どこか虚空にむけられていて、リュシアはうつろな目をしたまま、穏やかにわらっていた。
声も聞こえなければ、近くにいる誰かにさえ、気づくことができない。文字通りの、全身全霊だった。
「これ、秘密の手帳。全部、書いてあるから。巻き込んで、ごめんなさい…」
「でも、どうか、この事を、未来へ…つたえ…て……」
手帳を、どこかに落としてしまうように君たちに渡すと、リュシアはゆっくりと瞳を閉じる。
その瞳が開くことは、もうなかった。
一陣の風が吹き、そのあとに、白い光に包まれた女性が現れる。
女性は、リュシアを抱きかかえると、また、風と共に消えてしまった。
リュシアはたった今、神の座へと昇った。彼女に手を差し伸べた神が誰だったかはわからない。ただ、その光景を、目の当たりにした。
リュシアのいたところに、簡素な木の扉が現れる。
冒険者たちが探していた"扉"で間違いなさそうだった。
扉を開けば、この世界は消える。
その前に、と、冒険者たちは、手帳に目を通す。
手帳には、シャクラがリュシアに伝えた計画についてが書かれていた
・竜であるシャクラの力と、人間であるリュシアの力をそれぞれ引き継ぐのが、メイ
・メイの力が完全に成熟すれば、黒いドラゴンを倒すことができるかもしれない。
・もしその前に黒いドラゴンが現れた場合は、シャクラの体を依り代に、黒いドラゴンを封印する
・封印により、長い時間をかけてドラゴンの力を弱め、メイがそれを討伐する
・封印を維持するには、シャクラの力だけでは足りない
・森の生命や、ラゴニアに暮らす人たちからエネルギーをすこしずつもらうことになる
『本当は、こんなことしたくない』
扉を開ければ、世界は光に包まれる。
目を覚ますと。床の上に寝ているようだった。不安そうにのぞき込む、メイの姿がそこにあった。
見慣れた、子供の姿ではないメイだ。
キーリは、メイにも真相を伝えるつもりでここに呼んでいたのだという。
それを迎えに行くために、研究室を出たのだ。その最中に、冒険者たちは記録の世界へと旅立った。
想定外ではあったものの、真相を伝えるという目的は達成したうえに、巫女も、記録の世界を見ていた。距離が放れていたために冒険者たちとともにいることは無かったが、その歴史を、真相を見ていた。
キーリは語る。
・手帳を受け取ったのは、キーリの先祖であり、クェレブレの初代町長である
・封印の維持のために、竜災の真相について秘匿しなければならなかった
・終の竜災の原因は、その封印が解けたことにより、黒いドラゴン"リトラ"が解放されたことである
・リトラはメイを残してラゴニアを全壊させ、今はどこかで力を取り戻している
・おそらく、リトラはメイのためにもう一度ラゴニアへやってくる
・もう一度封印するなり、撃退するなりしなければならないが、その力は強大
・半年後に迫る竜災"リスク"は竜の眷属が引き起こす竜災のため、眷属の制御をとりもどすことができれば対抗策になりうる
キーリは最後に、メイに、その意思を問うた。
「正直、わからないことだらけです。昔のことも、記憶になくて、まるで他人の日記を読んでいる感覚で…でも、自分のことだってはっきり意識があって」
「リュサ…リュシア様やシャクラ様がやったことが、間違っていたとは思いません。私や、ラゴニアのためを思ってやったことだから」
「キーリ、貴方が私にしたあのいじわるな質問の答え、私はまだ、見つけられていません」
「でも…それでも、使命とか関係なく、今のラゴニアを、ラゴニアに住む人たちを守りたいと、思っています」
メイは、冒険者たちへと向き直る
「無理強いはしません。歴史を、見てきたんですよね…あのリトラの強大さを、きっと一番知っている」
「それでも、みなさんの力が必要なんです。どうか、おねがいします」
冒険者たちは、なんと答えただろうか。
メイは微笑み、返事を返す。
真相を知り、どこかふっきれたように笑うメイがそこにいた。
次なる竜災、影の竜災"ジィリス"が来るまで、あと、半年 ─────────
その後キーリは、ラゴニアに居を構えることになる。
ジョーランドの元で、様々な知見から、農業をはじめとしたあらゆる事業に口出しをしているらしい。
話をすれば、ふと思い出したように告げる。
サクラのことだ。
冒険者たちを研究室に招いた、その日の朝までは姿があったらしい。
彼女の正体を考えれば気は休まらないが、同様に、突然姿を消してもなんら不思議ではないことに気づく
以降、彼女が冒険者たちの前に表すことは無かった。
運命の日までは。
