
竜災の村 ラゴニア
ラゴニアは、魔導公国ユーシズから北東へ200km程進んだ場所に位置する小さな村でした。人口は300人前後で、木造建築の質素な建物が目立つ、のどかな村だったと言われています。
ラゴニア自体は小さな村で、外の人々がこの村の名前を聞くことはまずないでしょう。しかし、見識ある者にラゴニアについて聞けば、皆一様に「竜災の村」と答えます。ラゴニア周辺で発生する、数年に一度、竜が引き起こすとされる大規模な自然災害が"竜災"です。豪雨や噴火など、内容は様々ですが、竜災によって地図を描きなおす羽目になった製図師は数え切れません。そのため、正確な地図は存在しないとさえされています。
数年前発生した竜災により、ラゴニアは大規模な損害を受けました。この竜災は、大破局以降記録が残る竜災の中では最大級の災害であり、ラゴニアは、ごくわずかの生き残りを除いて、すべてを失いました。
現在は、ユーシズをはじめとした国々から派遣された冒険者が復興支援を行っており、かつての姿を取り戻しつつあります。
竜災により、大小問わず被害を被るこの小さな村を、各国がそこまでして支援する理由については、様々な憶測が飛び交ていますが、真相は謎のままです。
歴史
【魔法文明時代以前】
ラゴニアは小さな村ですが、その歴史は神紀文明時代までさかのぼります。
文献によれば、ヤヴィーの一族から別れ、山岳の一族が集まってできた集落が、現在のラゴニアです。
山から流れる豊かな水源と、近隣の森をはじめとした豊富な資源により、独自の文化を大系を形成しました。なぜヤヴィーの一族から別れることになったかは定かではありませんが、海側との交流自体はあったとされており、内乱などによる分裂ではなく、人口が増えた結果、海ではない場所を求める住人が増えたのでは、という意見が有力視されています。
後期には、壁画や伝承の中に"竜"が登場するようになります。この時登場する"竜"は、善性を持っていたとされ、後のラゴニアの繁栄はこの"竜"によってもたらされたと伝わっています。しかし、竜災によって失われた文献も多く、本当のドラゴンなのか、竜と呼ばれる別の存在なのか、現代における竜災のことを意味しているのかは、時折、歴史学者の議論の的となります。
【魔法文明時代】
魔法文明時代初期、文献に残る、最古の竜災はこの時代に発生します。
「神なる騒ぎが空を覆い、大地は揺れ、人々は立ち上がることさえできなかった。山は崩れ、河はあふれ、家、倉、壊れたものは数知れず」との記述から、相当規模の災害だったことがわかります。当時の人々は、この災害が起こった原因を「竜の怒りに触れたためである」とし、以降、明確に"竜"を信仰するようになります。こうして生まれたのが、"竜災"そして"竜巫女"です。
竜巫女は、竜災の到来を予見し、それが実際起こったときにそれを鎮める役割を持っています。最初の竜巫女とされているのが"リュサイア"という女性です。
彼女は、人の姿でありながら、竜の角、翼、尾を持ち、天地を操る力に長けていました。出自は明らかではありませんが、幼いころから天地使いとしての力を発揮しており、自ら竜巫女に志願したとされています。
リュサイアは、思慮深く、豪胆で、見識ある人物でした。このため、異形でありながらラゴニアの民には非常に慕われており、小さな喧嘩から罪人の処遇まで、あらゆる事象の最終決定権を持っていました。
彼女は実際に、竜災の到来を予見し、的中させ、ラゴニアの住民に備えを促したり、時には住民全員を別の場所に避難させるなどして、被害を免れたことが何度もあります。彼女への信頼は、単に優秀な天地使いであったことの上に、実績に裏打ちされたものでした。
彼女の最後は、様々な文献によって語られ、内容も様々ですが、多くは以下の結末に帰結します。
「かつて村を襲った巨大な竜災が再び起きようとしている。このままでは、住民を生かすことはできても、大地は死に、再び住むことは叶わなくなる。そう感じたリュサイアは山、森、海、空に住まう動物や幻獣と共に、竜災へと立ち向かい、その命を代償に竜災を鎮めた」というものです。
その後は、彼女の系譜を継ぐ者たちが竜巫女として選ばれ、村を守ってきました。
この頃から、ラゴニアでは、マナタイトをはじめとする希少な鉱石が採れるようになります。これは、竜災による地形変動などによって、採掘しやすい位置まで鉱石が露出したためです。これにより、北東のランドール地方や、南西のユーシズ魔導公国との交易が始まり、ラゴニアの文明レベルは飛躍的に上昇しました。経済的に余裕のある者は、自宅とは離れた場所に家を建て、避難用のセカンドハウスとすることもあったようです。
【魔動機文明時代】
魔法文明の衰退後、世は数百年の混乱に包まれますが、ラゴニアでは大した混乱は起きなかったとされています。
もともと独自の文化大系があったこと、魔法や、交易に依存しすぎなかったことなどが要因として挙げられますが、最も大きな要因は、竜災により栄枯盛衰を繰り返してきていたラゴニアにとっては、世の混乱も、ある意味よくあること、だったのです。
それからしばらくして、魔動機文明中期ごろ、ようやく魔動機術がラゴニアにやってきます。それまでの魔法は、巫女や一部の住民が使える程度でしたが、魔動機術の出現により、住民の多くがそれを有効活用するようになります。豊富な資源を基に、様々なアーティファクトが作り出され、竜災への対処も、過去に比べて容易になりました。
しかし、これ以降、ラゴニアの記録は断絶します。
ディアボリックトライアンフ
【大 破 局】
大破局の前後、及びその最中、ラゴニアの記録の一切は存在しません。
蛮族の侵攻、及び竜災により村そのものが消滅したのか、単に文献が残っていないだけなのか、いずれにしろ憶測の域を出ませんが、現代において、ラゴニアという村が存在する以上、完全に消滅したわけではないことだけが確かです。
魔導公国ユーシズの記録には、北東から蛮族の侵攻があったという記録が残っているため、山岳地帯を避けてラゴニアを通ったことは確かですが、まるで村そのものが無かったことになっているかのようで、真相は謎に包まれています。
【現在】
大破局の後も、村はひっそりと再興しています。
大破局の影響か、竜災の影響か、大破局以前の技術や魔法の多くは失われ、狩猟とわずかな採掘が村の収入源となっていました。
そして数年前、大破局以降最大の竜災"リトラ"によって、ラゴニアは壊滅状態にまで陥りました。当時の住民や家屋はほとんど残っておらず、ごく一部のほこらなどが残るのみです。
現在では、各所から冒険者が派遣され、復興事業が行われています。事業に参加している多くの住民は派遣された冒険者ですが、うわさを聞きつけて自らやってきた放浪者や、それらに対して薬草や武具、食事などを提供する商人が集まり、多い時で1000人ほどが村に在籍しています。
竜災の影響で遺跡や鉱脈が露出している場所が周囲に点在するため、それらへ向かう拠点としての役割も担っているようです。
経済
出土する希少鉱石と、狩猟による動物の牙や革などが主な収入源でした。力仕事の苦手な女性や子供は、動物の毛や革を使った工芸品を作っていました。その数の少なさから、一部では高値で取引されています。
現在は、村としての収入は存在しませんが、復興の為にやってきた商人などが、村向けに品物を売っています。
運搬費がかかるためやや割高ではありますが、ユーシズでの買い物とほとんど遜色ない品ぞろえを誇っています。
人々
多種多様な種族が暮らしていますが、他の集落や地域に比べ、リルドラケンとソレイユの割合がやや多かったようです。また、ナイトメアやアルヴ、ウィークリングなど、穢れを持つ種族に対しても寛容です。
また、ごくまれにリルドラケンの間から生まれると言われるハルヴドラケンも、ごくわずかに暮らしていたとされます。伝承に残るリュサイアがハルヴドラケンだったという説が有力です。
これらの寛容さの理由は、竜災という共通の相手がいること、最初の竜巫女がハルヴドラケンであったことなどが挙げられます。(ハルヴドラケンは蛮族でありながら人族陣営のため)
現在は、元の住民はほとんどおらず、多くはほかの地方からやってきた冒険者や商人で構成されています。中でも多いのがユーシズから派遣された冒険者で、魔法学園の生徒も積極的に参加しています。
ラゴニアで寝泊まりをしている者は多い時で1000人ほどで、7割が冒険者と放浪者、3割が商人と、ラゴニアに移住を望む者などです。冒険者を含む、住民のほとんどはなんらかの復興事業に関わっており、冒険に行かない日は、畑を耕したり、建築に携わるなどしているようです。
信仰
竜災にまつわる信仰が根強く、原初の竜巫女であるリュサイアを信仰する者がほとんどでした。リュサイアは、その信念や思想から、死後、ミリッツァに見初められたという説と、フルシルに見初められたという説があり、その2つの神を信仰する者も少なからずいたようです。
現在では、リュサイアのほこらが存在するのみです。
【リュサイアの信仰について】
『聖印と神像』
リュサイアの聖印は、女性の横顔と対称に描かれる竜がシンボルとして描かれることが多く、竜災に対する畏怖と、村に対する博愛を示しています。神像は現存しません。過去の資料によると、角や翼、尻尾を持つ女性の姿であることが多いようですが、必ずしも角、翼、尻尾の全てがあるわけではないようです。
リュサイアの聖印は竜の顔を思わせるような形をしています。
ですが少し丸みを帯びている為、「実はこれは竜を模したカブなのでは?」という説もあります。
『神格と教義』
リュサイアは魔法文明時代に竜災を予言し、竜災に立ち向かい自身の命を代償に村を守ったハルヴドラケンの少女です。
(大きなカブが好物でした。)
その献身的な行動を神に認められ神格化した蛮族でありながら第一の剣の神となった異例の神となりました。
リュサイアは自身が村の人族と違い、蛮族だという事を自覚しつつも受け入れられた事から「姿、形より大切なのは手を取り合える事」と学び、人族以外にも幻獣や動物達との交流を続けた結果幻獣や動物達と手を取り合う事を教義としています。
まるで言葉が通じているように幻獣や動物達と過ごしており、寝食を共にするのは勿論の事、農作業等も共に行っていたという文献が残っています。……が、何故かその文献の中にはやたらと「カブ」の単語が出てきておりリュサイアはカブが好物だったとされています。
『格言』
「大いなる災いを予見せよ。」
「重ねに重ねよ、それが人の手で無くとも重ねた力が我等の力となる。」
「信じなさい、我等は生命の一部なのです。」
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秘伝
ラゴニアでは、天地使いが重宝されてきた過去から、他の地域に比べ発達した相域を使う天地使いをみることができます。
これらは、小さなコミュニティで形成されてきた独自の”秘伝”であると同時に、ラゴニア周辺が帯びる特異な性質によって成り立つものとされています。
【秘伝の習得】
巫女に習う(50点名誉)
ラゴニア独自の相域を使うためには、巫女(メイ・アロスト)とコネクションを結び、教えを乞う必要があります。
そのためには幾ばくかのステータスが必要であり、名誉点を50点支払わなければなりません。
これは一種のコネクションの獲得のため(「フリー」で50点を賄える)センチネル級の冒険者であるならば、名誉点の支払いは不要です。
(メイ・アロスト本人とのコネクションとは別に名誉点を支払う必要があります。)
秘伝を習得するには、すべて名誉点の支払いが設定されています。秘伝ごと、既定の名誉点を支払う必要があります。この場合でも「フリー」ルールが適用されます。
【秘伝の使用】
秘伝の使用は、各種宣言特技と同じに扱います。使用宣言のタイミングや効果の適用範囲、リスクの考え方などは共通です。使用に条件が入る場合も、宣言特技と同様に存在します。
秘伝の使用宣言は、宣言特技の宣言を行ったものとみなされます。そのため、ルーンマスターなどの複数の宣言を可能とする戦闘特技を持っていなければ、複数の戦闘特技や秘伝を宣言することはできません。
各種の秘伝はその基礎特技と同名として扱います。